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モルヒネによる緩和ケアの安全性や鎮静との違い

モルヒネによる緩和ケアの安全性や鎮静との違い

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がんの緩和ケアの一環として、モルヒネ(医療用麻薬)を使用することがあります。

モルヒネと聞くと怖い印象を抱いたり、医療用「麻薬」という音に不安を感じたりする患者さんも少なくないですが、緩和ケアのモルヒネは決して怖い薬物ではありません。
緩和ケアに有効な薬物として、世界中で十分な臨床経験もあります。

ここでは、緩和ケアのモルヒネに対する一般的な誤解、モルヒネの使用方法、安全性などについて詳しく解説しています。

モルヒネに対する誤解

モルヒネ(医療用麻薬)は、「モルヒネ」という名称自体や「麻薬」という言葉から、一部に「怖い薬」という誤解があるようです。しかし、少なくとも緩和ケアの一環として用いられているモルヒネは、まったく「怖い薬」ではありません。

以下、一般的に聞かれる医療用のモルヒネへの誤解について3点ほど見てみましょう。

【誤解1】モルヒネを投与されると薬物依存症になるのでは?

専門家が管理せず、自己判断のみでモルヒネを使用した場合、身体的または精神的な薬物依存症になる可能性があります。

しかし、がんの緩和ケアの一環として医師が行うモルヒネ投与は、十分な安全性を担保するエビデンスや臨床経験に基づいて行われます。そのため、患者さんが薬物依存症になることはありません。

もとより、痛みの緩和を目的にモルヒネを使用した場合、依存性そのものが起こりにくいことも判明しています。

【誤解2】モルヒネを繰り返し投与されている間に廃人になるのでは?

モルヒネは麻薬の一種であり、一般的に麻薬は危険な違法薬物として認識されています。また、違法薬物である麻薬を常習した場合、やがて体がボロボロになり廃人と化す、というイメージもあります。
確かに麻薬を不適切に使用すると、覚醒剤やコカインと同様、非常に危険です。廃人になる可能性もあるでしょう。
ですが、がんの緩和ケアの一環としてモルヒネを使用する場合には、医師の管理のもとで適切に使用されます。

臨床的にも安全性が確立されているため、疼痛緩和を目的としたモルヒネで廃人になることはありません。

【誤解3】モルヒネは末期患者に投与される薬では?

モルヒネはがんの末期患者に投与される薬というイメージもありますが、このイメージも誤解です。

モルヒネを含めた各種鎮痛薬は、がんのステージではなく痛みの程度を基準に投与されます。そのため、たとえ末期であっても痛みが軽度の患者さんには、モルヒネを投与しません。

逆に、末期ではなくても痛みが強度の患者さんには、モルヒネの投与も選択肢となります。

モルヒネはがんの患者さんのみに使用される鎮痛薬ではなく、他の病気による手術後の鎮痛薬としても使用されています。「末期がん患者のみに使用される」という認識は、大きな誤解です。

緩和ケアに使用されるモルヒネとは

モルヒネ(医療用麻薬)が痛みの緩和に効く作用機序、および投与法の特徴や投与量などについて確認してみましょう。

人が「痛い」と感じるメカニズムとは

例えば足の指をテーブルの角にぶつけた際、足の指の細胞からは「発痛物質」と呼ばれる物質が放出されます。

この発痛物質が痛みの電気信号を誘発し、電気信号は化学物質(神経伝達物質)に変化。化学物質が神経細胞にある受容体へ結合し、脊髄を経由し脳に「足の指が痛い」という情報を伝えます。
がんによる痛みを感じるメカニズムも、基本的にはこの流れと同様です。

なお、このプロセスにおいて化学物質と結合する受容体のことを、オピオイド受容体と呼びます。

モルヒネはオピオイド受容体の働きを阻害する

これら痛みのプロセスのうち、オピオイド受容体の働きを阻害する薬物がモルヒネです。

オピオイド受容体の働きが阻害されれば、痛みによって生まれた化学物質(神経伝達物質)がオピオイド受容体と結合することはありません。
オピオイド受容体と結合しなければ、痛みの情報は脳に伝えられることもありません。

なお、モルヒネを始めとしたオピオイド受容体に作用を持つ鎮痛薬は、モルヒネ以外の鎮痛薬も含め「オピオイド系鎮痛薬」と総称されています。オピオイド鎮痛薬は、医師の管理のもと正しく投与されている限り安全に使用できます。

モルヒネの投与法と投与量

緩和ケアで使用されるモルヒネには、経口剤、坐剤、注射剤など、いくつかの種類があります。

経口剤の投与量は、投与開始時期が1日20~30mg。以後、患者の痛みの状態に応じ、30~50%の割合で投与量を増減させます。

坐剤の投与量は、経口剤の1/2~1/3ほどが目安。
注射剤についても、経口剤の1/2~1/3ほどを目安に投与を開始します。

モルヒネ以外に使われる鎮痛薬

がんの痛みを緩和させるための鎮痛薬は、非オピオイド系鎮痛薬とオピオイド系鎮痛薬の2つに大別されます。
痛みの程度が軽度の場合には非オピオイド系鎮痛剤、痛みの程度が中等度以上の場合にはオピオイド系鎮痛薬を用いることが一般的です。

以下、それぞれの系統に属する代表的な鎮痛薬を見てみましょう。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(非オピオイド系)

がんの痛み、骨転移にともなう痛み、がんにともなう発熱などのうち、比較的症状が軽度の場合には、非ステロイド性消炎鎮痛薬が選択肢となります。
頭痛や歯痛、生理痛などの一般的な鎮痛薬「ロキソニン」も非ステロイド性消炎鎮痛薬の一種となります。

アセトアミノフェン(非オピオイド系)

がんにともなう痛みが比較的軽度で、かつ腎機能や胃腸機能の低下により非ステロイド性消炎鎮痛薬を使用しいくい患者さんにおいて、選択肢の1つとなる鎮痛薬です。

腎機能等が低下していなければ、非ステロイド性消炎鎮痛薬との併用も可能です。

コデイン(オピオイド系)

がんにともなう痛みが中等度の場合に用いられることの多い弱オピオイド系鎮痛薬です。
鎮痛効果の程度はモルヒネの1/6~1/10程度とされています。

トラマドール(オピオイド系)

中等度の神経障害性疼痛に対して用いられることのある弱オピオイド系鎮痛薬です。

ヒドロモルフォン(オピオイド系)

海外では長い臨床経験のある代表的なオピオイド系鎮痛薬。肝代謝を受けた代謝産物に生理活性がありません。

オキシコドン(オピオイド系)

モルヒネに対する鎮痛力価が約3:2。腎機能が低下している患者さんにも投与が可能です。

フェンタニル(オピオイド系)

経口、静脈内、経皮、皮下などの様々な手法で投与が可能。即効性が高く、最大鎮痛効果まで達する時間はわずか5分とされています。

タペンタドール(オピオイド系)

セロトニンの再取り込み阻害作用を弱めた強オピオイド系鎮痛薬です。

メサドン(オピオイド系)

オピオイド受容体とMDA受容体に対する拮抗作用が特徴の鎮痛薬。オピオイド系鎮痛薬の中では、もっとも高い鎮痛効果を持つとされています。

がんの痛みの種類

がんに由来する痛みは、大きく分けて以下の4種類に分類されます。

がん自体の痛み

内臓に発生したがんや骨転移したがんなど、がん自体に由来する痛みがあります。

がんに関連した痛み

がんの療養を原因とした床ずれや便秘などの痛みがあります。

がん治療に関連した痛み

がんの手術など、がん治療に関連した痛みがあります。

がんにともなって併発したがん以外の痛み

変形性脊椎症や骨関節炎など、がんにともなって併発したがん以外の痛みがあります。

モルヒネと鎮静薬の違い

がんの痛みを緩和させるために使用されるモルヒネに対し、鎮静薬(ちんせいやく)は、まったく異なる目的で使用されます。

鎮静薬とは、患者さんの意識レベルを低下させる薬物の総称です。

がんによって「身の置き場もない苦痛」を感じている患者さんに対して検討され、薬物によって一時的または持続的に患者さんを眠らせることで苦痛から解放します。
必ずしも終末期の患者さんのみに選択される治療ではありませんが、中には鎮静薬の効果で眠っている間に最期を迎える患者さんもいます。

なお、鎮静薬の使用には倫理的問題が関与することから、原則として患者さん本人の意思を必要とするなど厳格なガイドラインが必要となります。

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