すい臓がんの生存率とは？5年・10年生存率（ネット・サバイバル）

すい臓がんは初期症状が出にくく、診断されたときには進行しているケースが多いため「見つかりにくいがん」として知られています。
本記事ではすい臓がんの生存率について、ステージごとの5年生存率や10年生存率を取り上げます。

がんについて調べていると、「生存率」という言葉を目にすることがあります。
数字で語られるとどうしても重く捉えてしまうものですが、生存率は“未来を決めるもの”ではありません。
ここでは、「生存率ってそもそも何？」「どんな種類があるの？」という基本的な疑問から数字の意味、その受け止め方まで説明します。

生存率とは、ある病気と診断された人が、5年や10年といった特定の期間を生きて過ごしている割合です。
がんにおいては「5年生存率」がよく使われ、診断から5年後にどれくらいの人が生存しているかを表します。

【生存率の見方】
・5年生存率80% → 診断された人数を100人とすると、5年後に生存していたのが80人
・10年生存率70% → 診断された人数を100人とすると、10年後に生存していたのが70人

覚えておいていただきたいのは、この数字はあくまでも過去のデータに基づく統計だということ。
実際の状況は、病状や治療方針、体質など様々な要因によって異なってきます。

生存率は、計算の仕方や焦点の当て方によっていくつかの種類があります。
代表的な3つの生存率を紹介します。

がんと診断された人のうち、一定期間生存している人の割合を単純に示した数値です。
この生存率の特徴としては「がん以外の原因（他の病気や事故など）で亡くなった人」も含まれるため、がんの影響だけを示す数値ではありません。

【例】
5年実測生存率が70%
→ 診断された人数を100人とすると、70人が5年後に生存（ただし、死亡の原因は問わない）

がんと診断された人の生存率を、同じ年齢層の健康な人の生存率と比較した割合です。
先述した実測生存率よりも、がんがどれだけ生存率に影響を与えているのかがわかります。
なお、近年ではより正確な指標として、次の「ネット・サバイバル」が用いられています。

【例】
がん患者の5年生存率が80%、ある年齢層の健康な人の5年生存率が95%
→ 5年相対生存率は約84%

がん以外の死亡要因を除いた生存率です。
この数値には、交通事故やほかの病気が原因で亡くなったケースが入りません。
そのため、「がんそのものが生存に与えている影響」をより正確に把握しやすくなります。
近年では、研究や国際比較などでも用いられることが多い指標です。

【例】
5年ネット・サバイバルが60%
→ 100人中60人が5年後に生存（がん以外の死因は含まない）

繰り返しにはなりますが、生存率とは、あくまでも統計的なデータに基づく「傾向」です。
がんと診断された一人ひとりに、必ずしも当てはまるものではありません。
それでは何のためにあるかというと、治療の効果を客観的に知るためです。
「どの治療が有効なのか」「どの程度生存率を伸ばせるのか」を医療に活かすための手がかりになるからです。
このように、生存率はがん治療のための大切な指標として用いられているのです。

すい臓がんの5年生存率、10年生存率について説明します。

全ステージを合わせた5年生存率は、ネット・サバイバルで13.1％（実測生存率12.1％）となっています。
ステージごとの5年生存率（ネット・サバイバル）はI期が56.2％、II期23.1％、III期6.1％、IV期が1.6％と進行するにつれ低下します。

※診断年と生存率：2015年5年生存率
※出典：国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」

全ステージを合わせた10年生存率は、ネット・サバイバルで6.4％（実測生存率5.6％）となっています。
ステージごとの10年生存率（ネット・サバイバル）は、I期34.5％、II期12.2％、III期2.7％、IV期が0.6％です。

※診断年と生存率：2012年10年生存率
※出典：国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」

すい臓がんの罹患数や年齢層など、その他の統計について取り上げます。

「罹患」とは、特定の病気にかかることを意味します。
全国がん登録罹患データ（2020年）を見ていきましょう。

●部位別がん罹患数（男性）

●部位別がん罹患数（女性）

男性と女性それぞれのデータから見ると、男性のすい臓がん罹患数は22,557人で8番目、女性は21,891人で7番目に多いがんだとわかります。
すい臓がんは男女で罹患数にそれほど大きな違いがなく、男性が若干多い程度。
胃がんや乳がんなど男女差が大きいがんもありますが、すい臓がんは性別に関わらず一定の割合で発症していることが読み取れます。
また、罹患数の順位がともに比較的高いことから、男女ともに注意が必要な部位と言えます。

※出典：国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」（全国がん登録）

■男性

■女性

※単位：例

すい臓がんの年齢別罹患数を見ると、男女ともに年齢が上がるほど罹患率が増える傾向にあります。
特に60歳を超えたあたりから顕著に増え始めています。
男性の場合、50代前半の罹患率は人口10万人あたり16.7人ですが、60代後半には71.6人に増え、その後さらに加速して、80代前半には151.2人、90代前半で181.5人とピークに達します。
女性の場合も似た傾向で、50代前半では10.2人だったのが、60代後半で47.4人、80代前半で118.2人、90代前半で155.8人と高齢になるほど高まっています。
男女ともに60歳を境に罹患リスクが急上昇するため、この年代以降は特に注意が必要だと言えます。

※出典：国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」（全国がん登録）

・すい臓がんの生存率はステージによって大きく異なり、I期では56.2%、IV期では1.6%（5年ネット・サバイバル）。
・罹患率に男女の大きな差はなく、60歳を超えてから罹患リスクが上昇する傾向にあります。
・代表的な生存率は「実測生存率」「相対生存率」「ネット・サバイバル（純生存率）」の3種類。
・生存率はあくまでもデータであり、一人ひとりの治療経過や体の状態によって異なるため、この数字だけで未来が決まるわけではありません。
・生存率は、「治療の効果を測定する指標」として医療に役立てられています。

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