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日本におけるがん治療の現実

現実にわが国ではがん患者さんたちはどのような医療を受けているのでしょうか?
ここに現在のがん治療成績をもとにした100人のがん患者さんのモデルがあります。

今、100人の様々ながん患者さんが医療を受けるとします。最初にそのがんの進行度を調べるステージングが行われ、80人が根治的医療の対象となり、残りの20人は進んだ時期にあると判断されます。根治的医療をうけた80人のうち48人は経過観察中に再発せず治ったとみなされますが、32人は体のどこかに再発してきます。この32人のほとんどは治療を受けても次第に進んだ時期、すなわちがんが体のあちらこちらに存在するという状況に至ります。この時期にはがんに伴ういろいろな症状が出現しており、痛みをはじめとするこの症状への対処が重要となってきます。この時期では未だ命の危機に直面しているわけではなく社会生活を送ることは可能なものの、放置するとがんにより重要な機能が侵されていきます。やがて、終末期を経て最終的には52人の命が尽きるときがやってきます。

では、これらのがん患者さんはそれぞれの時期でどのような医療を受けるべきだと考えられているのでしょうか。現在の医療体系において有効と考えられているのが、統計学的な根拠に基づいた手法です。インターネットの普及により全世界の医学論文を検索することが容易になってきました。そこで、最もふさわしいと考えられる治療法を見出す一連の方法をEBMといいます。このEBMの基礎となる医学論文のほとんどは、治る可能性のある「がん」が進み、余命いくばくもない時期にある方にとっては、直面する痛みなどの症状を取り去ることが優先されます。この終末期をたんとうするのが緩和ケアです。このようにして見ていくと、ちょうど真ん中の「再発進行期」の方への医療が、抜け落ちていることがわかります。200万人にのぼる、これらの「がんを抱えて生きている」方々に対する医療体系を整備することが急務であるといえましょう。

話は変わりますが、よく、がん治療法の進歩とか、がん検診による早期発見ががん治癒への道とか言われています。ではこのようながん医療の進歩は患者さんたちにどのような利益をもたらしているのでしょうか?それを示した表が下記のものです。

  早期発見率 早期治癒率 非進行期 進行期 再発期 治癒 非治癒
現状 80 60 80 20 32 48 52
A 80 65 80 20 28 52 48
B 85 60 85 15 34 51 49
C 85 65 85 15 30 55 45

これまでの検討により、8割の「がん」は早期に発見され、その6割は治癒するということがわかりました。その結果、治る人は100人中48人、治らない人が52人という比率です。そこで、もし、治癒率が5%上昇するとどうなるのか、それを計算したものが「A」です。52人が治り、48人が治らないという結果になりました。この設定は国立がんセンターで過去5年間に達成された成果に基づくものです。今度は早期発見率が5%向上した場合はどうなるのでしょうか?
結果は「B」です。治る人は51人となりました。もし「A」と「B」の両方が現実のものとなった場合はどうか?それが「C」です。55人が治ると出ました。

がん治療技術の進歩やがん健診の充実により過半数の患者さんたちが治癒するということがわかります。しかし残りの40%以上の方は最終的にはがんが原因で命を落とすことに変わりありません。がん克服は道半ばの感が否めません。

今、がんを抱えて生きている患者さんの命が延命できたとしたらどうでしょうか?

下の表は5年生存を治癒とみなし、20年間(誘発がんの発生まで)観察し、治癒しない患者さんの命が5年間に均等に失われるとして計算した生存指標の一覧です。

  現状 A B C D
予後中央値 4.36 20 20 20 8.72
予後平均値 10.90 11.60 11.43 12.17 12.20

ここで「A」「B」「C」は先ほどと同じくそれぞれ、非進行期の治癒率が5%アップ、非進行期の発見率が5%アップ、両者とも5%アップという設定であり、
「D」は治癒率や発見率は変わらずに再発進行期の生存期間のみが2倍になった場合を想定しています。

現在の医学会の中では生存期間の指標として中央値を用いることが薦められています。過半数の患者さんが治癒に至れば中央値は一気に観察期間上限にまで達するわけですが、平均値でみれば、「D」の非進行期の成績はそのままでも再発進行期の生存期間が倍になった場合のほうが著しい改善傾向を示すことがわかります。

これまでに見てきたように、がんの最大の脅威とは労働生産年齢の方々が無残にも命を落とすことでした。その時期が少しでも延びることはそれだけ子供たちの成長を見届ける機会に恵まれるわけであり、がん対策が発展途上の医療技術である現状からみて再発進行期にある患者さんの延命が急務であることを意味していると考えられます。

ここまでのことをまとめると、現在のがん医療の最大の問題点とは「がんを抱えて生きている」100万人以上(7-8年後には200万人以上となる)の患者さんとそのご家族の「命のこと」、「家族の行く末のこと」、「暮らしのこと」、「生きがいのこと」これらの様々な願いに向き合うという真摯な姿勢に欠けているということです。EBM体系からは「何をやっても無駄」といわれ、緩和ケア体系からは「あきらめて楽になろう」といわれるこのような患者さんたちは少しでも希望を求めて、全国の様々な医療機関だけでなく民間療法施設やお呪いのたぐいも含め、さ迷いめぐるといういわゆる「がん難民」状態が出現していることを政府や医学界はどのように受け止めているのでしょうか?

私たちクリニックC4は『がんをあきらめない』

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