厚生労働省の報告によると、国内における小腸がんの年間罹患数は3,908人とされています。人口10万人あたりで見ても非常に数が少なく、いわゆる「希少がん」に該当します。
そのため、一般的ながんに比べて情報が少なく、医師から「末期」という説明を受けた際に、強い孤独や不安を感じてしまう方も少なくありません。
本記事では、小腸がんの種類ごとに見られる末期症状をはじめ、ステージ4との違い、治療方針や苦痛を和らげる緩和ケアについて詳しく解説します。
参照元:【PDF】厚生労働省公式 「令和5年(2023年) 全国がん登録 罹患数・率 報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001630323.pdf
小腸がんは、がんが発生する場所によって割合が異なり、およそ45%が十二指腸(じゅうにしちょう)、35%が空腸(くうちょう)、20%が回腸(かいちょう)とされています。
また、小腸がんは「どの細胞から発生したか(組織型)」によっていくつかの種類に分かれ、それぞれ現れやすい末期症状が異なります。
参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 「小腸がん(十二指腸がん・空腸がん・回腸がん)」
https://ganjoho.jp/public/cancer/small_intestine_cancer/index.html 2026年6月26日時点
小腸の内側にある粘膜から発生する腫瘍(しゅよう)です。主に、胃液や胆汁などの消化液の影響を受けやすい小腸の入り口(十二指腸)に多く発生します。
【おもな末期症状】
「胃の出口」に近い場所ががんで塞がってしまうため、食べたものだけでなく胃液や胆汁が逆流し、激しい嘔吐(おうと)を繰り返すことがあります。
がんが胆汁の出口を塞ぐと、胆汁が血液中に逆流し、皮膚や白目が黄色くなる「黄疸」や、全身の強いかゆみが生じます。
がん細胞がお腹の中(腹膜)に種をまいたように散らばり、大量の腹水が溜まります。これによってお腹がパンパンに張ったり、息が苦しくなったりします。
ホルモンを分泌する特殊な細胞から発生する腫瘍で、小腸の出口付近(回腸)によく見られます。
【おもな末期症状】
腫瘍から分泌される特定のホルモン(セロトニンなど)の影響で心臓の弁が傷つき、右心不全(うしんふぜん)を起こして、足のひどいむくみや息切れが生じることがあります。
この種類のがんは肝臓に転移しやすい特徴があります。転移したがんが巨大化することで、右上腹部に重苦しい痛みが出たり、肝臓の機能が低下したりします。
ストレスや麻酔などをきっかけに、腫瘍から大量のホルモンが一気に放出され、急激な血圧低下や重い不整脈を起こす恐れがあります。
粘膜の下にある筋肉の層にある細胞から発生する、肉腫(にくしゅ)の一種です。主に空腸や回腸に発生します。
【おもな末期症状】
大きくなった腫瘍の表面が崩れて血管が破れると、吐血をしたり、便がイカスミのように黒くなる「タール便(黒色便)」が出たりして、急激な貧血を起こします。
巨大化した腫瘍がお腹の中で破れてしまうことがあり、激痛とともに強い腹膜炎を起こしてショック状態に陥るリスクがあります。
お腹の中に子どもの頭ほどの大きな塊(しこり)ができ、それが周りの臓器を強く圧迫して苦痛を引き起こします。
小腸にあるリンパ組織から発生する、血液のがんです。リンパ組織が集まっている回腸に多く発生します。
腫瘍が急速に大きくなって腸の壁を突き破ったり、治療によって腫瘍が急に壊死(えし)して穴が空いたりすることで、激しい腹痛(急性腹膜炎)を引き起こします。
がんの進行に伴い、持続する発熱や急激な体重減少(B症状と呼ばれる症状)がより顕著になり、体力や免疫力が著しく低下します。
血液の流れに乗って、小腸だけでなく脾臓(ひぞう)や骨髄(こつずい)などにも病変が広がり、それぞれの臓器の機能不全を伴う症状が現れます。
「末期」という言葉には、医学的に一律の厳密な定義があるわけではありません。しかし、一般的にはがんの広がりに関わらず、「がんを完全に治すための治療が難しくなった段階」を指します。
がんが小腸から遠く離れた臓器(肝臓、肺、腹膜など)に転移しているという、あくまでがんの広がりの度合いを示す医学的な分類です。ステージ4であっても、お薬(化学療法や分子標的薬)によって進行を抑えながら、長期間にわたり自分らしい生活を続けている方はたくさんいます。
がんの広がりの度合い(ステージ)だけでなく、これ以上の治療の効果が期待できなくなり、治療による体へのダメージ(副作用)がメリットを上回ってしまった状態を指します。そのため、ステージ4の方すべてが末期というわけではありません。
末期段階では、がんそのものを小さくする治療よりも、痛みやつらさを和らげること(生活の質=QOLの維持)を最優先に考えます。
末期段階の治療では、お体の負担になる無理な根治治療は行わず、つらい症状を抑えて生活を守る「緩和的(対症的)な治療」が中心となります。
使用するお薬やアプローチは、がんの種類(組織型)やお体の状態(肝臓や腎臓が薬を処理できる体力があるかなど)に合わせて検討されます。
・小腸腺がん:
大腸がんに準じた抗がん剤治療(5-FUやオキサリプラチンなど)で進行を抑える検討をします。
・神経内分泌腫瘍(NET):
ホルモンによる特有の症状を抑える薬(ソマトスタチンアナログ製剤)や分子標的薬(エベロリムス、スニチニブなど)に加え、がん細胞の受容体を狙い撃ちにして内側から放射線をあてる「PRRT(ペプチド受容体放射性核種療法 / ルタテラ)」という、分子標的放射線治療(アイソトープ治療)が有力な選択肢となります。
・消化管間質腫瘍(GIST):
一般的な抗がん剤が効きにくいため、がんの増殖に関わる特定の分子を狙い撃ちする「分子標的薬(イマチニブなど)」が中心となります。
・悪性リンパ腫:
手術ではなく、リンパ腫に効果の高い抗がん剤(リツキシマブなど)を用いた化学療法がおもな選択肢となります。
小腸がんは小腸腺がんをはじめ、遺伝子検査(エキスパートパネルなど)によって特定の遺伝子変異が見つかりやすい特徴があります。
お腹に水が溜まって苦しい場合、まずは利尿剤で水分量を調整します。それでも張りが強いときは、お腹に細い針を刺して直接腹水を抜く処置(腹腔穿刺)を行います。最近では、抜いた腹水からがん細胞を取り除き、体に必要なタンパク質成分だけを濃縮して再び血管に戻す「KM-CART(カート)」という専門的な処置をとることもあります。
緩和ケアは、決して「治療法がなくなった後の最後のケア」ではありません。現代の医療では、がんと診断されたその時から、不安やつらさを和らげるためにいつでも受けられるサポートです。
特に小腸がんのような希少がんは情報が少なく、患者さんやご家族が孤独感や大きな不安を抱えやすいため、早い段階から緩和ケアを取り入れることが強く推奨されています。
患者さんの体調やご希望、ご家族の状況に合わせて、主に3つの場所から選ぶことができます。
がんによる体や心の苦痛を和らげることに特化した専門の病棟です。一般の病棟よりも静かで落ち着いた環境が整っており、面会などの制限も緩やかなことが多く、ご家族との時間を大切にできます。
「住み慣れた我が家で、自分らしく過ごしたい」という希望を叶えるための選択肢です。専門の医師や看護師が定期的に自宅を訪問し、痛み止めの管理や必要な医療処置を行います。24時間体制で連絡がつく仕組みがあるため、夜間の急な体調変化にも対応可能です。
これまで治療を受けてきた使い慣れた病院で、担当医や院内の「緩和ケアチーム」と連携しながらケアを受ける方法です。これまでの経緯を知っている医療スタッフに囲まれているという安心感があります。
小腸がんは珍しいがんであり、情報が少ないことから不安が大きくなりがちです。しかし、現代の医療にはそれぞれの種類に応じた適切な対処法があり、痛みや苦痛を取り除く緩和ケアの技術もしっかりと確立されています。
末期における緩和ケアは、決して「治療の諦め」ではなく、最期までその人らしく、痛みのない穏やかな時間を守り抜くための前向きな医療です。
一人で、あるいはご家族だけで抱え込まず、主治医や病院の「がん相談支援センター」、専門の「緩和ケアチーム」を頼り、今の不安やこれからの希望を言葉にして伝えることから始めてみましょう。
クリニックC4は
末期がんや再発がんはもちろん
「治療方針に迷っている」
「手術以外の選択肢を探している」
という段階からのセカンドオピニオンを広く受け入れています。まずはご相談ください。