腎臓は握りこぶしほどの大きさで、そら豆によく似た形をしている臓器です。お腹の背中側(後腹膜と呼ばれる場所)に、左右に1つずつ備わっています。
血液をろ過して尿をつくる働きがよく知られていますが、実は血圧の調整、血液をつくるホルモンの分泌、ビタミンDの活性化なども担う非常に重要な器官です。この腎臓を構成する細胞(腎実質)が悪性腫瘍に変化してしまった状態を「腎臓がん(腎細胞がん)」と呼びます。
本記事では、腎臓がんの症状を中心に、末期に現れるサインや似ている病気、検査・治療の流れについて詳しく説明します。
腎臓がんは、がんの大きさや進行度合いによって、体に現れるサインが大きく変わる病気です。初期の段階から、進行・転移した際に見られる症状までを段階を追って説明します。
腎臓がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。背中側の深い位置にあるため、異変が起きても自分では気づきにくい臓器だからです。
そのため、がんが小さいうちに見つかるケースの多くは、定期的な健康診断や人間ドック、あるいは別の病気で受けた超音波(エコー)検査やCT検査などで「偶然発見される」ことがほとんどです。また、肺や骨などに転移したがんが先に見つかり、詳しく調べた結果、大元の原因が腎臓がんだったと判明することもあります。
初期には目立たなかったがんも、腫瘍が大きくなるにつれて少しずつ体に異変をもたらします。以下のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
代表的な症状の1つです。腫瘍が大きくなり尿の通り道にまで及ぶと、尿に血が混じるようになります。腎臓がんの場合、排尿時に痛みを伴わない(無痛性血尿)ことが多いのが特徴です。
がんが大きくなって腎臓を覆う膜が引き伸ばされたり、周囲の組織や神経を圧迫したりするようになると、わき腹(側腹部)や背中、腰のあたりにズーンとした重苦しい痛み(鈍痛)が生じることがあります。
がんがさらに大きくなると、仰向けになってお腹やわき腹を触った際に、硬い塊(しこり)に触れることがあります。手で触れてわかる場合は、がんが進行している可能性があります。
大きな腫瘍が太い血管を圧迫することなどにより、足のむくみ(下肢浮腫)が生じることがあります。また、胃腸が圧迫されることで、食欲不振、吐き気、便秘、お腹の痛みが現れることもあります。
腎臓がんは、血流に乗って他の臓器へ転移しやすいという特徴を持っています。特に肺へ転移しやすく、他にも骨、肝臓、副腎、脳などに広がる可能性があります。
・肺への転移:胸の痛み、長引く咳(せき)、血痰(血が混じった痰)など
・骨への転移:骨の強い痛み、ちょっとした衝撃や転倒での骨折(病的骨折)など
・脳への転移:激しい頭痛、体の一部が動かしにくくなる運動麻痺、めまいなど
がんが全身へ広がり末期段階になると、がんによる体への影響や、腎機能の低下に伴う以下のような症状が現れるようになります。
・全身の症状:
持続する発熱、全身の強い疲労感や倦怠感、急激な体重減少、腫瘍の影響による貧血など
・激しい痛み:
腫瘍が周囲の神経や組織を激しく圧迫することで、腰や背中に持続する強い痛み(疼痛)が生じます。
・腎機能低下に伴う症状:
腎臓の働きが悪くなって塩分や水分の排出が不十分になり、高血圧を引き起こしたり、尿の異常や両脚のひどいむくみが現れたりします。
血尿や腰・背中の痛みがあると不安になりますが、こうした症状は他の一般的な病気でも起こる可能性があります。特に腎臓がんと見分けがつきにくい代表的な疾患を紹介します。
膀胱に細菌が感染して炎症が起こる病気です。血尿が出る点は腎臓がんと同じですが、膀胱炎では「排尿時の強い痛み」や「尿の濁り」「何度もトイレに行きたくなる(頻尿)」がはっきりと現れます。痛みのない血尿が断続的に出る腎臓がんとは、痛みの有無に違いがあります。
尿の通り道に石ができる病気です。結石が尿管などに詰まると、のたうち回るような激しい痛みが腰や背中、脇腹に急激に起こるのが特徴です。血尿もその痛みのタイミングに合わせて出ることが多いです。進行するまで痛まない、あるいは鈍痛が続く腎臓がんとは痛みの激しさが異なります。
男性の前立腺に細菌が感染する病気です。血尿や腰の痛みに加え、38℃以上の急激な高熱や強いだるさ、尿の出にくさ、股の間の痛み(会陰部痛)が急に現れます。発熱を伴わないまま静かに進行することの多い腎臓がんとは、症状の急激さに違いがあります。
※これらは症状だけで完全に個人で見分けることは難しいため、自己判断せず早めに受診することが大切です。
腎臓がんの有無や進行度を正確に診断するために、以下のような検査を組み合わせて行います。
体の表面に器具をあて、苦痛なく腎臓の形や腫瘍の有無を確認します。
確定診断のために最も重要となる検査です。がんの大きさや、周囲の血管・リンパ節、他の臓器への転移の有無を詳しく調べます。
造影剤アレルギーなどでCTが使えない場合や、より詳しく診断したい場合に行われます。
全身の状態や、腎臓が現在どれくらい働いているかを把握するために行います。
画像検査だけでは診断がつかない場合、細い針で組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
腎臓がんのステージ(病期)は、がんの大きさや広がり(T)、近くのリンパ節への転移(N)、離れた臓器への転移(M)を組み合わせて、Ⅰ期からⅣ期に分類されます。
・ステージⅠ:
がんの大きさが7cm以下で、腎臓の中にとどまっている状態です。
・ステージⅡ:
がんの大きさが7cmを超えていますが、まだ腎臓の中にとどまっている状態です。
・ステージⅢ:
がんが腎臓の周囲の脂肪組織や太い静脈(腎静脈など)に広がっている、または近くのリンパ節に転移がある状態です。
・ステージⅣ:
がんが腎臓を包む一番外側の膜(ゲロタ筋膜)を越えて外へ広がっている、または肺や骨など離れた臓器に転移している状態です。
腎臓がんの治療は、ステージやがんの性質、患者さんの体力や持病などを総合的に考えて決定されます。
腎臓がんの最も標準的な治療です。がんが小さい場合はがんの部分だけをくり抜く「腎部分切除術」を行い、できるだけ腎機能を残します。難しい場合は、片方の腎臓を周囲の脂肪ごとすべて取る「腎全摘除術」を行います。現在は体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術が主流です。
ステージⅣなど、手術で全てを取り除くのが難しい場合に行われます。
腎臓がんのなかでも多いタイプである淡明細胞型(たんめいさいぼうがた)には、ふたつの厄介な特徴があります。
ひとつは、遺伝子の変異によって専用の新しい血管(腫瘍血管)を急速に作り出し、栄養をどんどん横取りしてしまうこと(血管新生)。
もうひとつは、身体を守る免疫の攻撃からうまく隠れて逃げてしまうことです。
これらの特徴に対抗するため、がんの血管新生を断つ「分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)」と、患者さん自身の免疫の力を再び活性化させる「免疫チェックポイント阻害薬」を組み合わせた併用療法(IO-TKI療法やIO-IO療法)が、現在の標準治療として高い効果が得られやすくなっています。
かつて腎臓がんは放射線が効きにくいとされていましたが、放射線照射技術の進歩(体幹部定位放射線治療:SBRT)により、その評価は大きく変わっています。
ピンポイントで強力な放射線を集中照射する「SBRT」を用いることで、大元の腎臓のがんに対しての治療効果が得られやすくなり、持病や年齢の影響で手術や凍結療法(凍結と融解を繰り返すことでがん細胞を死滅させることを目的とした治療法)が難しい場合における、重要な選択肢となっています。
また、脳や骨に転移した場合でも、進行を抑えたり激しい痛みを和らげたりする目的(緩和照射)で積極的に行われます。
がんが小さく(一般的に4cm以下)、高齢や持病のために手術が難しい場合に選ばれる選択肢です。背中から特殊な針を刺し、がん組織を凍らせて死滅させます。
腎臓がんは、初期段階では自覚症状がほとんど出ない病気です。そのため、早期に発見して治療につなげるには、定期的な健康診断や人間ドックでの尿検査・超音波検査が非常に重要な役割を果たします。
がんが進行すると、痛みのない血尿や背中・腰の痛み、わき腹のしこりといったサインが現れ始めます。これらは他の病気(膀胱炎や結石など)の可能性もありますが、重大なサインであることに変わりはありません。少しでも体の異変や違和感を感じた場合は、決して放置せず、早めに泌尿器科などのある病院を受診して検査を受けましょう。
クリニックC4は
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