厚生労働省によると、国内における肺がんの年間罹患数(新しく病気と診断される人の数)は123,989人です。がん全体の順位(上皮内がんを除く)では男性が4位、女性が3位となっており、非常に身近な疾患の一つと言えます。
医師から「肺がんの末期」という説明を受け、これからどのような症状が出るのか、どのような治療が可能なのか、一人で大きな不安や孤独を抱えている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、肺がんの種類ごとに現れやすい末期症状をはじめ、ステージ4と末期の違い、治療方針や苦痛を和らげる緩和ケアについて詳しく解説します。
参照元:【PDF】厚生労働省公式 「令和5年(2023年) 全国がん登録 罹患数・率 報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001630323.pdf
肺がんは大きく分けると「小細胞(しょうさいぼう)肺がん」と「非小細胞(ひしょうさいぼう)肺がん」の2つに分類され、後者はさらに「腺がん」と「扁平上皮がん」に分けられます。
がんの性質や増殖のスピードによって、現れやすい末期症状に違いがあります。
肺がん全体の約15〜20%を占めるがん※です。非常に増殖のスピードが速く、早い段階から血液に乗って全身に広がりやすい(転移しやすい)特徴があります。
短期間のうちに腫瘍が大きくなり全身に広がるため、急激な体重減少や、起き上がれなくなるほどの強い倦怠感(だるさ)が一気に進むことがあります。
肝臓や脳、骨髄など広範囲に転移が広がり、それぞれの臓器が十分に働かなくなることで、黄疸(皮膚が黄色くなる)や意識の混濁などの症状が重なります。
がん細胞がホルモンに似た物質を勝手に分泌することで生じる症状です。一例として、血液中のナトリウム値が異常に下がる「低ナトリウム血症」を引き起こし、ふらつき、けいれん、意識障害などを起こすケースがあります。
※参照元:【PDF】国立がん研究センター がん情報サービス 院内がん登録関連資料「気管支および肺」(2024年版)
https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/can_reg/hospital/pdf/lung2024.pdf
日本の肺がんの中で最も多く※、肺の奥深く(末梢・外側)に発生しやすいがんです。初期には症状がほとんど出ないため、発見された時には進行しているケースも少なくありません。タバコを吸わない女性にも多く見られます。
肺を包む胸膜(きょうまく)にがんが広がると、お腹に水が溜まる腹水と同じように、胸に大量の水(胸水)が溜まります。これにより肺が圧迫され、激しい息切れや息苦しさが生じます。
腺がんは骨に転移しやすい性質があります。背骨や腰、骨盤などに転移すると激しい痛みを伴い、ちょっとした衝撃で骨折(病的骨折)をして歩けなくなることもあります。
脳に転移した場合、脳の圧力が高まることで激しい頭痛や吐き気、体の一部が動かなくなる麻痺(まひ)、意識障害などが現れることがあります。
※参照元:日本肺癌学会「患者さんと家族のための肺がんガイドブック」https://www.haigan.gr.jp/public/guidebook/2024/2024/Q2.html
タバコ(喫煙)との関連が非常に強いがんです。肺の奥ではなく、空気の通り道である太い気管支(肺の中央部)の粘膜に発生しやすい特徴があります。
気管支の粘膜が腫瘍によって激しく刺激されたり、血管が破壊されたりするため、止まらない咳や、血が混じる痰が出ます。がんが大きくなると、喀血(かっけつ:血を吐くこと)による窒息のリスクも生じます。
空気の通り道(気管支)が腫瘍で塞がれてしまい、その先にある肺に分泌物などが溜まって激しい炎症を起こす状態です。肺炎を何度も繰り返すことで著しく体力を奪われ、呼吸不全を引き起こす原因になります。
上半身の血液を心臓へと戻す太い血管(上大静脈)が胸の腫瘍によって押しつぶされてしまう状態です。血液が頭から戻りにくくなるため、顔や首がひどく腫れ上がったり、頭が重く苦しくなったりします。
「末期」という言葉には、医学的に一律の厳密な定義があるわけではありません。しかし一般的には、がんの広がりに関わらず、「がんを完全に治すための治療が難しくなった段階」を指します。
がんが肺だけでなく、遠く離れた臓器(骨、脳、肝臓など)や、反対側の肺、あるいは胸水の中に転移しているという、あくまでがんの広がりの度合いを示す医学的な分類です。
確かに統計上の5年生存率は低い数値(肺がん全体で約7.4%)※ではありますが、近年は新しい薬の登場により、ステージ4であっても薬で進行を抑えながら、数年にわたり自分らしく元気に暮らしている方はたくさんいます。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 院内がん登録生存率集計結果「肺がん」2014-2015年5年生存率
https://hbcr-survival.ganjoho.jp/graph?year=2014-2015&elapsed=5&type=c24#h-title
がんの広がりの度合い(ステージ)だけでなく、これ以上の抗がん剤などの治療に耐えられる体力が残っていなかったり、「治療による体へのダメージ(副作用)が、得られるメリットを上回ってしまった状態」を指します。そのため、ステージ4だからといってすべての方がすぐに末期というわけではありません。
末期段階では、延命よりも「残された時間をいかに苦痛なく、穏やかに過ごすか(生活の質=QOLの維持)」を最優先に考えます。
末期段階の治療では、お体の負担になる無理な根治治療ではなく、呼吸の苦しさや痛みを取り除き、穏やかに過ごすための「緩和的(対症的)な治療」が中心となります。
患者さんの日常生活の自立度や、肝臓・腎臓などの臓器が薬を処理できる体力に合わせて治療法が選ばれます。
進展期(Stage IV相当)であっても体力が保たれている場合は、従来の抗がん剤(プラチナ製剤+エトポシド)にがん免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体:デュルバルマブなど)を組み合わせた治療を検討します。
これにより、以前に比べて病状の進行を長期に抑えられるケースが増えています。
ただし、体力を著しく消耗している場合は無理な投薬を避け、苦痛緩和を優先します。
がん遺伝子パネル検査等により、特定の遺伝子変異(EGFR、ALK、ROS1、MET、RET、KRASなど)が見つかった場合、それを狙い撃ちする「分子標的薬」を使用します。
とくに近年の分子標的薬(オシメルチニブやアレクチニブなど)は脳への移行性が非常に高く、脳転移による頭痛や麻痺に対しても、薬物療法だけで高い効果を発揮することが増えています。
体力が保たれている場合は、自身の免疫の力を利用する「免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ、オプジーボなど)」が検討されます。また、腫瘍が気管支を塞いで窒息の危険がある場合は、網状の筒を入れて通り道を広げる「気道ステント留置術」という処置で呼吸の苦しさを緩和します。
「放射線はがんを治すためのもの」というイメージが強いですが、末期においては「痛みの蛇口を閉める」「空気の通り道を確保する」ための強力な痛み止めとして用いられます。骨転移による激しい痛みや、脳転移による頭痛・吐き気を抑えるのに非常に有効です。また、腫瘍が気管を押しつぶしている場合に放射線で少し縮小させ、空気の通り道を広げて窒息感を取り除くこともできます。
自宅や病室で酸素を吸う「酸素療法」や、医療用麻薬(モルヒネなど)を微量に使用することで、脳にある呼吸のコントロールセンターの過敏さを抑え、息苦しさを劇的に楽にする処置が行われます。胸水が溜まって苦しい場合は、胸に細い管を通して水を外へ出す「胸腔(きょうくう)ドレナージ」という処置を行います。
緩和ケアは、積極的ながん治療ができなくなってから始まるものではありません。特に肺がんは「呼吸」という命に直結する部位の病気であるため、「息ができないかもしれない」という精神的な恐怖や不安が非常に強く現れやすい傾向にあります。
そのため、がんと診断された早い段階から、あるいはつらさを感じた時点から緩和ケアを取り入れることが大切です。身体的な痛みだけでなく、精神的な不安も同時にサポートしてもらうことができます。
患者さんの体調やご希望、ご家族の状況に合わせて、主に3つの場所から選ぶことができます。
がんによる体や心の苦痛を和らげることに特化した専門の病棟です。一般の病棟よりも静かで落ち着いた環境が整っており、ご家族との時間を大切にできます。
「住み慣れた我が家で、自分らしく過ごしたい」という希望を叶えるための選択肢です。専門の医師や看護師が定期的に自宅を訪問し、24時間体制で急な体調変化にも対応します。
これまで治療を受けてきた使い慣れた病院で、担当医や院内の「緩和ケアチーム」と連携しながら、通院や入院でケアを受ける方法です。
肺がんの種類や進行の仕方によって現れる末期症状は異なり、その一つひとつが、今後の治療やケアの選択を考えるための重要なサインになります。
延命を最優先にするのか、それとも苦痛を和らげながら生活の質を保つことを重視するのか。その判断は病状だけでなく、患者さんご自身の体力や価値観によっても変わるものです。末期症状に関する知識は、決して絶望するためではなく、「これからどう過ごしたいか」を主体的に考えるための大切な土台となります。
患者さん本人の思いを中心に、主治医や医療スタッフ、ご家族とよく話し合いながら、その人らしい穏やかな過ごし方を選んでいくことが、肺がんの末期症状と向き合う上で何より大切です。一人で抱え込まず、専門のサポートチームをしっかりと頼ってください。
クリニックC4は
末期がんや再発がんはもちろん
「治療方針に迷っている」
「手術以外の選択肢を探している」
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